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信者獲得と定着

第三章 信者獲得と定着に向けた取り組み

第一節 区分について

信徒と檀家の定義
 大本山成田山仙台分院において信徒もしくは檀家をどのように獲得しているのかと、獲得した信徒もしくは檀家をどのように定着させているのかについて考察する。本稿では獲得、定着の対象となる信徒と檀家について次のように定義する。「信徒」は、これまでに1回でも祈祷を行ったことがある人で、「檀家」は、納骨堂・永代供養墓を利用している人である。

第二節 獲得に向けた取り組み

 まず獲得に向けた取り組みについて述べる。大本山成田山仙台分院が獲得しなければならないものとして大きく二つ挙げられる。一つは信徒でもう一つが檀家である。そして獲得される側の人は、言うまでもなく現時点で信徒もしくは檀家ではない人なのだが、その中でも二つに分けることができる。それは参拝者と未信者という分類である。本稿で扱う参拝者は、ただ大本山成田山仙台分院に参拝しに来たことがある人で、未信者は信徒、檀家、参拝者のいずれにも該当しない人と定義する。つまりこの節では、これまで大本山成田山仙台分院との関係がなかったもしくは薄かった人を獲得するために、寺院が具体的に行っている取り組みについて取り上げる。しかし、現在大本山成田山仙台分院では参拝者向けに行っている取り組みは特に存在しない。したがって未信者に向けて行っている取り組みを中心に論を展開する。信徒、檀家それぞれについて次以降の項で詳しく述べる。
第一項 「信徒」の獲得
 未信者とは、信徒、檀家、参拝者のいずれにも該当しない人である。要するに、大本山成田山仙台分院に直接的にかかわったことがない人である。信徒、檀家、参拝者、未信者のうち未信者が最も数として多いのは、当たり前のことだ。したがって、この未信者をいかにして信徒や檀家にしていくのかが非常に重要になってくる。
 未信者の中には、大本山成田山仙台分院について知っている人、知らない人のどちらも多く存在するだろう。しかし、これらの人々はこれまで直接大本山成田山仙台分院に関わることがなかった人たちであり、何も発信しなければこれからも関わることがない人がほとんどである。この不特定多数の人々に対して寺院について発信する最も効率的な手段は、テレビや新聞などのメディアを介することだ。テレビや新聞などは、多くの人が毎日見るので、多くの人の目に入りやすく、名前を知ってもらうという目的なら最も効率的である。大本山成田山仙台分院でも、かつてはテレビのCMや新聞などで「広告」を行っていた。しかし、それらもH15年頃にすべて終了してしまった。終了してしまった理由として挙げられるのは、テレビや新聞などは費用対効果が薄いことだ。CMや新聞などを使って広告を出すと、多くの人に対して発信はできるが、その分お金がかかってしまう。広告の中で最も長く続いていたタウンページによるものもインターネットの普及により紙媒体の電話帳があまり使われなくなったこともあり、影響力が薄くなっていったためH15年に終了になった。
 CMや新聞による「広告」を終了した大本山成田山仙台分院だが、その代わりに力を入れていることがある。それは、寺院のホームページを工夫することだ。未信者の中には、一生祈祷寺院には関わらないという人もいる。しかし、そうではない人たち、つまり祈祷や供養をしなければならない、もしくはしてもらいたい人たちもいる。この取り組みは、後者の人々に対してより効果的に発信できるものだ。具体的に述べると、他の寺院では寺院のホームページから、ホームページ内の祈祷や供養それぞれのページに進むのが一般的であるが、大本山成田山仙台分院では一つのホームページから初詣や祈祷のようなそれぞれのリンクにつなげるのではなく、はじめからそれぞれのホームページを独立させて作っている。
初詣
祈願
 この方法は祈祷関係だけではなく、納骨堂や永代供養墓など墓関係のホームページにも採用されている。そのため、信徒の獲得だけではなく檀家の獲得にも貢献しているといえる。この方法によるメリットとは、大本山成田山仙台分院でインターネット関係を担当している方曰く、「仙台で水子供養や納骨堂を利用したい人がインターネットで検索するとき、検索結果の上位に来るようになっているため、大本山成田山仙台分院という名前を知らない人でも大本山成田山仙台分院のホームページを閲覧してくれる」ことだ。他の寺院が採用している方法では、その寺院のホームページはその寺院を知っている人しか閲覧する機会がない。
 先ほども述べた通り大本山成田山仙台分院では、インターネット上の検索では仙台においての検索結果の上位に必ず来るような心がけをしている。検索結果の上位にいることによる恩恵は少なくない。例えば、先述の通り寺院の名前を知らない人でも閲覧できることだ。そしてさらに、メディアに取り上げられる回数が増えるという利点もある。(人形供養感謝祭)
 続いて参拝者について述べる。参拝者とは、信徒や檀家ではなくただ大本山成田山仙台分院に参拝しに来た人である。参拝者の中には「観光で来る人」、「お守りを求めに来る人」、「御朱印を目的に来る人」など目的は様々だ。現在この寺院において参拝者に対し特別行っていることはない。かつては、参拝に訪れた人を記帳していたが、祈祷を行うまで至る人があまりいなかったので記帳は行わなくなった。しかし、寺院側はこれから力を入れていかなければならない対象であると考えている。そのように考えるのは、既存の信者だけを大切にしていても、新しく信者を取り込まない限り時代とともに寺院は縮小していくだけだという考えに基づいている。参拝者は実際に寺院に足を運んでおり、直接寺院と関わりを持っているため、大本山成田山仙台分院に直接関わりがない未信者と比べて信者になる可能性は高い。そのため、より効率的である参拝者向けの取り組みを中心に進めていくのも一つの手である。
第二項 「檀家」の獲得
 続いて、どのようにして檀家を獲得しているのかについて記述する。ここでも獲得の対象となるのは未信者と参拝者である。前述のように参拝者向けに行っている取り組みは特に行っていないため、未信者の獲得について述べる。大本山成田山仙台分院では、現在納骨堂や永代供養墓の分野に力を入れている。前でも少し触れたが、年々申し込み軒数も増加しており、檀家寺院としての役割も果たしてきている。しかし、もともと祈祷を中心に成り立っている大本山成田山仙台分院に檀家として年々申し込みが増えているということは、何かこの寺院でなければならない特別な理由があるはずである。その理由として考えられるのは、大本山成田山仙台分院は他の寺院にはあまり見られないいくつかの特徴を売りにしていることだ。その六つとは、@葬儀も合わせてできることA寄付金がないことB金額が明瞭であること(法要と供養)C納骨堂の管理者がいなくなったら合祀に切り替えられることD他の寺院でもらった戒名を持っている場合でも対応することである。説明を要すもののみ具体的に記述する。  では、まず@から説明する。@は大本山成田山仙台分院では、納骨堂などの墓をもつことだけでなく葬儀も合わせて行うことができるということだ。次はAだが、寄付金がないとはどのようなことなのかというと、通常他の寺院で檀家になるには入檀金、割り当て寄付金、修繕寄付金などが必要であるのに対し、大本山成田山仙台分院では一切受け取っていない。つまり納骨堂などそれ自体に支払う金額以外には支払いが発生しないということである。次はBである。大本山成田山仙台分院では納骨堂、葬儀などに関わるあらゆる金額があらかじめ明確に記されている。寄付金においても同様のことがいえるが、大本山成田山仙台分院では金額に関して明瞭にすることを心掛けている。その理由は次の通りである。例えば葬儀においては、遺族の方々はお金の心配などしているような心理状況ではないため、せめてお金の部分だけでも不安な気持ちを取り除いてあげたいという考えから大本山成田山仙台分院では金額を明瞭にするようにしている。金額が不明瞭である寺院では、葬儀の後にさらにお金を徴収され事前に説明した、説明していないで口論になったという話をよく聞くと住職から伺った。もめごとが起きてしまうと、寺院、檀家お互いにこれからもよい付き合いをするのは困難である。そのような話を聞いているからこそ、大本山成田山仙台分院では明確にすることで、檀家との長期的な付き合いを始める第一歩としていると筆者は考える。続いてCであるが、これは記述の通りのため説明を省く。また、Dは他の寺院がつけた戒名がある場合、真言宗以外の宗派に属している場合でも大本山成田山仙台分院では対応するということだ。要するに、全て大本山成田山仙台分院で行うということは義務付けられてはいないという内容である。この取り組みから、宗派の枠にとらわれない姿勢が読み取れる。  これら六つの特徴により、大本山成田山仙台分院は檀家の獲得を試みている。

第三節 定着に向けた取り組み

 次に、信徒や檀家に定着させるための取り組みについて述べる。獲得の次は、信徒や檀家となった人々をどのようにして信者として定着させるかが重要になってくる。信徒に対しての取り組み、檀家に対しての取り組みについて述べる。
第一項 信徒向け  信徒には大きく分けて二つの種類がある。一つは「特に信仰の篤い信徒」で、もう一つが「それ以外の信徒」である。一つ目の、「特に信仰の篤い信徒」のことをこの寺院では「篤信者」と呼んでいるため、本稿でも以下「篤信者」と記述する。そして、もう一つの「それ以外の信徒」を本稿では便宜上「一般信徒」と記述する。
  1. 篤信者
     大本山成田山仙台分院が、信仰の篤い信徒向けに行っている行事がある。それは「表彰式」である。表彰式とは、御祈願を多くされた信徒の中で、計○回など回数に一区切りついた信徒を対象に、不動明王の信仰の伝播に寄与したことに感謝の意を表する形で表彰する式である。この式は、この寺院の開山記念日に毎年行われている。  さて、この式典を行うことで信徒側、寺院側双方にどのようなメリットがあるのだろうか。まず信徒側のメリットについて考える。信徒側にとって、自らの信仰心を表彰されることにどのような意味があるのだろうか。表彰式に参加した三人の信徒の方に対するインタビューから考察する。この三人の方のプロフィールを以下の表に簡単に示す。なお、氏名は本名ではなく名字のイニシャルのみを表記するものとする。

    信徒インタビュー対象者
    氏名/性別1.Wさん(女性)2.Sさん(男性)3.Aさん(女性)
    年齢(代)80代50代80代
    信者歴約10年20年以上13年
    来山頻度2年前からほぼ毎月1年に1回(お正月)毎月2、3回以上

     この三人の方に聞いた内容は、次の三つである。
    1. 成田山仙台分院を知ったきっかけ
    2. 祈祷をする目的
    3. 表彰式を行うことについての意見
     まず、@成田山を知ったきっかけ について述べる。三人の方のうちWさん、Sさんは昔仙台分院の本山である千葉県の新勝寺にお参りに行ったことから成田山という存在を知ったと言っていた。しかし、Aさんが成田山を知ったきっかけは新勝寺にお参りに行ったからではなく、大本山成田山仙台分院がきっかけである。具体的に言うと、Aさんの義理の甥が仙台分院の近くにある赤門鍼灸柔整専門学校の下見に行った後でAさんと会ったときに、Aさんが甥の肩越しに不動明王の姿を見たことで、そういえばと大本山成田山仙台分院の存在を思い出し、通うようになったのである。住職曰くこのような例がきっかけで信徒になる方は多くはいないそうである。それならWさんやSさんのように「成田山」という名前をそもそも知っていて、仙台にも分院があるということを後で知る人の方がきっかけとしては多いのではないだろうか。
     次に、A祈祷をする目的 について述べる。祈祷の目的に関しては、三人の方に共通して「健康祈願」という特徴が見られた。その中でもWさん、Aさんは病気平癒の祈願をしたのちにこの先も健康であるようにという祈願もしており、信仰の篤さがうかがえる。
     そして最後にB表彰式を行うことについての意見 について述べる。表彰式に関しては、三人の方の意見が同じものとなった。それは、「ありがたい」という意見である。信徒の方々が口をそろえて「ありがたい」という感謝の言葉には二つの背景が考えられる。一つは、「自分の信仰心が認められたことによる感謝」だ。祈祷に来る人の目的は様々だが、その中にはWさんやAさんのように病気の苦しみから解放されるようにという願いから寺院を訪れる人もいる。そのような人々は、長い間病気が治るようにと祈り、治った後も健康であるようにと祈り続けており、信仰を一つの支えとして生きている。しかし、信仰は目には見えない。その目に見えない信仰を、寺院側が「表彰式」という目に見える形で認めることで、信徒側が感謝の気持ちを持つのではないだろうか。
     そしてもう一つは、「寺院との距離を縮められたことへの感謝」だ。Sさんは、「祈祷を何年も続けることで、住職さんに顔を覚えてもらい、以前より親身に話ができるようになった。」という話をしていた。寺院に毎年欠かさず正月に訪れているというSさん一家は「大本山成田山仙台分院に行かないと落ち着かない、安心できない。」と話しており、こちらも大本山成田山仙台分院が心の支えとして機能していることがわかる。そしてその寺院が「表彰式」を行うことで、寺院と信徒との距離がさらに縮まり、これからも親身な付き合いをしやすくなる。そこから生まれる感謝の思いというのが、二つ目の背景であると考える。
     続いて、この節の主テーマでもあるように、信徒として定着させることができるということはこの式典の最大のメリットで間違いない。そして定着する信徒は皆信仰の篤い信徒であるため、信仰を広めることだけでなく信仰を深めさせることも求められる寺院にとってはプラスのことである。特に、インタビュー調査を行ったAさんは前述の「萩の会」の会員であり、自らに起きた体験を不動明王の信仰と絡めて発信する側になっている。Aさんのように、自分の体験を信仰に絡めて広めていこうという気持ちをもった信徒が、これからも信徒であり続けるのは寺院にとっても喜ばしいことだろう。
     このように、信徒側と寺院側それぞれのメリットにより「表彰式」が行われている。
  2. 一般信徒
     続いて篤信者ではない信徒、すなわち一般信徒向けに行っている定着に向けた取り組みについて論じる。一般信徒に対しては、その規模を考えても表彰式のような行事を行うことができない。したがって、何か別の手段での取り組みを行う必要がある。そこで大本山成田山仙台分院が行っているのが、信徒に適した行事案内を送付するということである。まず、仙台分院では行われる行事を外部向け、内部向けの二つに分けている。外部向けは、初詣やお盆の行事などどのような人でも申し込める行事で、内部向けは、お不動様スス払い(不動明王大仏報道 新聞)など寺院の内部に関わる人しか参加できない行事だ。大本山成田山仙台分院ではこの二つのうち外部向けの行事に参加しやすさのランクをつけている。例えば、初詣における祈祷は最も参加しやすいランクの一つであり、不動宝剣魔除祈祷会における祈祷が参加しやすさとしては最も難易度の高いものとなっている。これらのランク付けされた行事の中から、信徒一人一人に適した行事案内を送付しているのである。
     そこで、約一万人と非常に多い信徒に対してどのようにしてそれぞれに適した行事案内を送っているのかがこの項の鍵となる。その具体的な方法は、信徒が祈祷を申し込む際に提出する申込書を活用することだ。申込書には信徒の名前や祈祷の種類など、祈祷に必要な情報を記入する欄に加えて、大本山成田山仙台分院からのお手紙の御案内を受け取るか、受け取らないかを記入する欄が設けられている。その欄に、「お手紙の御案内を受け取る」と記した信徒に対しては行事案内を送り、「お手紙の御案内を受け取らない」と記した信徒に対しては行事案内を送付しない。そして、どの信徒が現在どのくらい祈祷を行っているかなどの情報をパソコンにデータとして取り込んで管理しているため、信徒一人一人に適した行事の案内(成田山寺院案内)を送ることができるのである。
     この取り組みには信徒を定着させるということ以外にもう一つのメリットがある。それは、信仰の篤い信徒が増えるということである。このような行事は行っているのか、お不動様の信仰に直結する行事は行っているのかなど、信徒から寺院に対してのアプローチによるものだけでは、信仰の篤い信徒はなかなか生まれない。しかし、寺院の方から信徒に対して、それぞれに適した行事案内を送付すればおのずと参加する信徒も増え、信仰も深まる。信仰を広めることも重要だが、信仰を深めることも同時に重要なことだ。したがって、大本山成田山仙台分院が行っている現在の取り組みは信仰の篤い信徒を育てるという取り組みである。 檀家向け
第二項 檀家向け
 続いて、大本山成田山仙台分院が檀家向けに行っている取り組みについて述べる。檀家からの収入は、祈願・祈祷によるものに比べて安定しているため長期的な付き合いになるほど寺院の経営も安定する。しかし、現在大本山成田山仙台分院が檀家に対して行っている取り組みは特に存在しない。檀家の獲得に注力しているようであった。

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